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仙台育英はなぜ円陣を組まず、グラウンドを見ていたのか? 試合前の甲子園。花咲徳栄が円陣を組んでいる一方で、仙台育英の選手たちはグラウンドを向いて座り、後ろから須江監督が話をしていました。 この違いは脳科学的に見ると非常に面白いです。 もちろん、仙台育英が脳科学を意識してこの形を取っているのかは分かりません。ただ、試合直前の脳の状態を考えると、グラウンドを見ながら話を聞くことには一つのメリットがあります。 それが「予測」です。 脳は、目の前で起きた出来事を見てから動いているわけではありません。視覚から入ってくる情報と過去の経験を照らし合わせながら、少し先に起こることを予測しています。野球で打球に反応できるのも、ボールが飛んできてからすべてを計算しているのではなく、投球やスイング、打球の初期情報からその先を予測しているからです。 その予測を作る材料になるのが、試合前に入ってくる視覚情報です。 特に甲子園のような普段とは違う球場では、いつものグラウンドとは奥行きも景色も違います。選手がグラウンドを見続けていれば、その空間情報が試合開始前から脳へ入り続けることになります。 ここで円陣との違いが出てきます。 円陣を組むと選手の視線は自然と内側へ向きます。仲間の表情や声が強く入ってくるので、チームとして感情を高めるには非常に優れた方法です。 一方、仙台育英の形では、監督が後ろにいるため選手はグラウンドから目を切る必要がありません。耳から須江監督の言葉が入りながら、目にはこれから自分たちがプレーする空間が入り続ける。 この状態なら、監督の話を単なる言葉として聞くだけではなく、目の前の試合環境と結びつけながら処理できる可能性があります。 さらに試合前は、気持ちを高めれば高めるほど良いとも限りません。 過度に興奮すると交感神経系の活動が高まり、注意の範囲が狭くなったり、動作に余計な力が入りやすくなったりします。特に甲子園という舞台では、何もしなくても選手の覚醒水準は上がりやすい。 だからこそ、さらに気持ちを上げるより、目の前の環境を静かに取り込みながら試合に入る方法も合理的です。 この場面で仙台育英がやっていることを脳科学的に表現するなら、気持ちを試合に向けるというより、脳の予測を先に甲子園へ合わせていると考えると分かりやすいでしょう。 試合開始前の数分間。 実はこの時間から、脳の中ではすでに試合が始まっています。

鈴木一登/スポーツ鍼灸

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